【聲の形】キャラ別にそれぞれの立場からコミュニケーションの形を考える【考察】

石田将也(いしだしょうや)

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石田将也は、行動がもたらす人への影響を誰よりも一番理解している人間です。

西宮が転校して来るまで、石田は好き放題やっていました。西宮が来ても、直情的に
「気持ち悪い」「うざい」「もっとうまくやれ」と言い、耳元で叫ぶ、補聴器を壊す、砂をかける、ノートを水場に捨てる、殴るといった直接的な行動を取りました。

そして西宮の転校を期に、石田はいじめられ、西宮が見てた世界を経験します、みんなの顔にバツがついてる、周囲の言動が自分への罵詈雑言に思える。
自分がやった行動が、こんなにも人を苦しめていたのか。待って、いままで自分がしてきた行動で人の役に立てたことがあったか、ない、ないよ。おれは周りに迷惑ばかりかけてきた人間なんだ、おれはこの世界に生きていちゃいけない人間なんだ、おれは自分のことが嫌いだよ。
(実は人の顔にバツがついてる世界は、石田が想像する西宮が見ていただろう世界で、実際に西宮が見ていた世界とは異なるのですが)

この世界に迷惑かけた分の義理だけ返してこの世界とお別れしよう。石田ママに170万円、自分の行動で得たお金で返す。西宮には、彼女にとって周囲とコミュニケーションに不可欠だったノートを返すことで贖罪する、彼女のコミュニケーション手段だった手話を覚えた上で。

川へ飛び込む写真ばらまかれた時、結弦はおれに聞いた、怒らないのか?って。起こるわけないさ、おれの行動が招いたこと、身から出た錆。自分の行動の責めは自分で取る。

西宮ママにビンタされたときだって、これはおれが西宮にやった行動に比べたら何の事はない。ビンタで過去を清算できるなら、もっとビンタしてくれ。

植野は高校にもなって西宮の補聴器を取り上げた。今のおれは西宮にとってその補聴器がどんなに大事なものか、この世界との接点なんだってことが痛いほどわかる。植野、補聴器を西宮に返せ。

皆が橋の上で言い争いになった時、おれは一人一人を否定した、自分を含めて。それはおれが、その行動が人をどれだけ傷つけるか一番わかってるからだ。

自分の取る行動がどれだけ人を左右するか知っている石田だかたこそ、西宮を自殺から救った自己犠牲が光るんですね。

おれ一人では、生きていけない。人の顔が見れない、人の声が聞けないんだ、だから自分の行動がまた誰かを傷つけてしまうかもしれない。そんな人間はこの世界に生きていちゃいけない。でも西宮がおれを助けてくれるなら、あんな嫌がらせを受けて、皆にいじめられて、おれじゃ耐えられなかったような世界でも笑ってコミュニケーションを諦めなかった西宮がおれのそばに居てくれたら、おれも生きていけるかもしれない。「君に生きるのを手伝って欲しい」

ラスト、人の顔が見れない石田に、西宮は君の目になると伝えます。ひどい言葉を浴びせた皆に恐る恐る会ってみたら、皆は自分のことを歓迎してくれた。永束、真柴、川井、佐原、そして植野は、自分の生還を喜んでくれた。おれはこの世界で生きていてもいいのかもしれない。もっと人の顔を見よう、人の声を聞こう。西宮は耳が不自由なのに、あんなに人とコミュニケーションを取ろうとしていた。見える目と聞こえる耳があるなら、生きたい世界があるなら、この目と耳で人とちゃんとコミュニケーションを取ってみよう。

植野直花(うえのなおか)

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小学校の頃、裏表なしにはっきり口に出す石田のことが好きだった。石田は、クラスの和を乱した西宮に対しても「気持ち悪い」「謝んなよ」とはっきりと口に出した。陰口を叩く女子たちとは違って。だからカッコよかった、クラスの気持ちをはっきりと表現する石田に憧れた。

でも状況が変わり、植野は自分の立場を守るために石田をスケープゴートしたのも自覚してる。

罪悪感があったから、また西宮が来る以前の関係を取り戻したかったから、にゃんにゃんクラブへ恥ずかしい猫耳の姿で、石田を誘った。

でも冗談でしょ、クラスの和を見出した西宮とはっきり拒絶を表していた石田が一緒に行動してる。西宮、あんたは何にも分かってないよ。あんたが石田を不幸にしたんだよ。
だから、横断歩道で西宮と会ったとき、補聴器を取り上げたし、観覧車に誘ってはっきり言ってやった。
でも分かってる、石田を不幸にしたのは西宮のせいだけじゃない、私のせいでもあるんだ。

西宮を助けて石田が死にかけた時、昏睡状態の石田を毎日看病していたのは、植野だった。のに石田は、そしてやっぱり石田は西宮を選んだ。
嫌がらせを受けても笑って濁し、いじめられているのに「ごめん」と謝る、悲劇のヒロインぶって石田を殺しかけた、でも石田に選ばれた西宮。

植野は、みんながそれぞれはっきりと主張しあう中で落とし所を見つけていくのがコミュニケーション、それが友達だと考えている女の子。
でもみんなが自分と同じやり方だとは限らない。西宮は自分が悪くもないのに謝るし、川井は自分だけが可愛くて悪者には絶対ならない、佐原は弱虫でくじける。そして植野自身も、自分の思っていることとやっていることを齟齬に苦しんだ、小学校の時以来。
だからこそ、思ったことを行動に出す石田が好きだった。今も好きだよ。それでも石田は西宮を選ぶなら、私も西宮を含めて、川井や佐原とももう一度コミュニケーションを取る努力をしてみるよ。